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犯罪心理鑑定とは何か?

“犯罪心理鑑定”とはどのようなものかご存じでしょうか?

“精神鑑定”とは違って,これは心理学的にアプローチし,被告人(あるいは被疑者)のパーソナリティや家庭環境,成育史などが犯罪とどのように結びついたのかを明らかにし,犯罪のメカニズムを解明する鑑定なのです。また,被告人が更生をしていくための条件や方法などについても鑑定のなかで意見を述べることもあります。これまで司法領域では“情状鑑定”という用語で使用されてきたのですが,犯罪心理鑑定は量刑を定めるための情状を重視するのではなく,あくまでも心理学的な観点から犯罪や被告人の特徴を理解していくという特徴があります。

この犯罪心理鑑定が近年実施されることが少しずつ多くなってきました。それは殺人などの重大事件は裁判員裁判の対象となり,国民の中から選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行うようになったからです。つまり,審理の対象となる事件がどのようないきさつから起こったのかを裁判員にわかりやすく示す必要が高まったことが理由の一つにあります。そんなことから,鑑定が依頼される事件は重大事件が多いのですが,なかには被告人が発達障害や人格障害などを抱えていたり,一般的な理解ではわかりにくい難解な事件にも鑑定が実施される場合があります。

鑑定人は被告人に面接や心理テストを実施したり,家族や知人にあって情報を収集して意見を出します。実は,このような鑑定のプロセスが被告人にとてもよい効果を生むことが少なくないのです。これまでの警察などの捜査機関での面接とは違い,鑑定人は被告人とともに事件や過去を振り返ったり,今後のことをじっくり話し合ったりします。すると,今まで自分のことを見ないようにしていた被告人も少しずつ内省を深めたり,具体的な将来の展望を抱いて,更生に意欲的になったりします。確かに,鑑定は治療や処遇とは違いますが,判決前に犯罪心理鑑定が行われることにより,処遇への動機付けが高まることはこれまでの鑑定を数多くしてきた経験からも言えます。

今後は犯罪心理鑑定がより広まっていき,それを実施できるスペシャリストである鑑定人もたくさん育っていってほしいと願っています。(橋本和明)

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