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『バガボンド』と犯罪心理学

皆さんは『バガボンド』という漫画をご存知でしょうか。『バガボンド』とは,バスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK』の作者 井上康彦氏によって描かれる,剣豪宮本武蔵の物語であります。『バガボンド』には,剣豪宮本武蔵が,殺傷や殺し合いをも含む剣の道を通して,自分自身について苦悩したり,相手への理解やつながりを深めたりしていく姿が描かれています。主人公である宮本武蔵藤原玄信を流祖とする剣術流派は,兵法二天一流剣術と呼ばれ,現在も継承されています。その流派を含め,日本から古く続く武術を,総称して古武術と呼びます。

古武術というと,どのような印象を持たれるでしょうか?恐い?とっつきにくい?
いやいや,武の元々の意味は,「武器(戈)を手に力強く地面を踏みしめて進むこと」とされ,「剣術においては「殺人刀・活人剣」,柔術においては「活殺自在」と表現されるように,威力を秘めた殺人刀や殺法の技法を錬磨し備えることが,無用の争いをさけるための抑止力につながり,活人,活法に転化する」(財団法人 日本武道館 2007)とされています。元々,冷徹な殺傷術である古武術には,活人性が秘められているんですね。

話は変わって,犯罪心理学。皆さんは,この言葉を聞いて,どういう印象を持たれるでしょうか?恐い?とっつきにくい?
いやいや,犯罪心理学会における近年の学会発表では,加害者の査定や処遇,被害者支援等といったテーマに加えて,トラウマ治療技法の一つであるEMDRに関する研究や,トラウマ研究の領域で注目されている心的外傷後成長(PTG)に関する研究等,治療性や成長性に着目したテーマが多く見られており,実証性を重視する調査研究から,主観性や個別性,例外性も大切にする事例研究まで,幅広い研究方法による取組も活発に行われています。

犯罪心理学は,“犯罪”という言葉から連想されにくいであろう治療性や成長性をも射程に入れつつ,心理学の一領域らしく,客観性や実証性はもとより,主観性や個別性,例外性をも大切にしながら,今日まで発展してきております。
古武術の中に求道性や活人性があるように,犯罪心理学の中にも治療性や成長性が秘められています。このコラムを御覧になられた方々も,御一緒に犯罪心理学の道を探求してみませんか。(中島賢)

(引用文献)
財団法人日本武道館編 2007 日本武道協議会設立30周年記念 日本の武道 財団法人 日本武道館

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