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災害と犯罪

自分が継続して行っている研究テーマの一つに「災害と犯罪」がある。災害と犯罪との関係を明らかにし,災害後の犯罪を防ぐための方法を研究するものである。これはいわば環境要因の急激な変化が人間の行動にどのような影響を与えるのかを解明し,犯罪防止に役立つ知見を提供することを目指す実際的な学問である。災害後に犯罪が起きると,被災者は災害被害からの回復に専念できなくなってしまうので,災害後の犯罪被害を減らすための方策を考えることはとても重要なことになる。

海外では大きな災害が起きると被災地では犯罪が起き治安が悪化するといった報道が見られる。しかし,私たちは日本ではそのようなことが起きないと考えているのではないだろうか。これまで調査を行ってきた阪神・淡路大震災(1995年),東日本大震災(2011年),そして熊本地震(2016年)では,警察統計を見ると確かに被災地では認知件数の総数は減少していた。ところが,地域別・罪種別で検討すると増加が見られたものがあるし,被災者の方々からていねいに情報を集めると犯罪被害の申告が得られた。どうやら大きな災害のあった被災地では犯罪が起きにくくなるというわけではないようである。

今,新型コロナウイルスが社会に大きな影響を与えている。これも災害の一種と捉えることができる。便乗犯罪の発生は人々が新型コロナウイルス対策に集中することを妨げるだろう。そのため,この状況下における犯罪発生の実情と対策を早急に明らかにする必要があると考えている。(岡本英生)

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