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少年鑑別所視察委員の経験から

家庭裁判所調査官出身の大学教員という立場から、平成26年の法施行によって設置された少年鑑別所視察委員会の委員としてA少年鑑別所に関わらせていただいている。

年間5~6回開催される委員会で、委員の問題意識に沿って職員から情報提供を受けたり、少年に面接したりして、実情把握に努め、必要に応じて所長宛に意見提出することを業務としている。A少年鑑別所では、医師、弁護士、自治体職員、法学部大学教員、地元代表者などが委員を務めている。

昨年度は、少しでも多くの入所少年の意見を聞き、少年達が、安定した心持ちで自分を振り返ながら審判までの大切な時期を過ごす場として改善すべき点がないかを探るために、少年鑑別所のご協力を得て、入所少年へのアンケート調査を実施した。
限られた期間で50名弱の人数だったが、少年達の生の声に触れる貴重な機会になった。

アンケートは、主に少年鑑別所入所生活について尋ねるもので、例えば、「A少年鑑別所の部屋や食事や衣服などの環境について」、「職員の説明で入所目的の理解が出来たか」、「わからないことはどうしたか」、「職員の皆さんへの接し方」など8項目について、「良い」「まあまあ」「よくない」といった簡単な選択肢への回答に加えてそれぞれ自由記述欄を設け、更に「その他伝えたいこと」にも自由に書いてもらう形式を取った。

まず、正直なところ自由記述をどれほど書いてくれるだろうかという気持ちがあったが、想像していたよりもはるかに沢山の率直、かつ生産的な記述がなされたことに驚かされた。少年達に、こうした発言の機会が与えられること自体が少年の健全育成をはかる上でも意味があるのではないかと感じたところである。

「暑い」「寒い」といった個々の指摘も、寮舎毎の気温測定データと照らし合わせてみたところ、確かにその通りの差があることがわかったりもし、気づかされることがあった。

最後に、詳細を述べられないのは残念だが、回答をまとめて勇気づけられたのは、総じて少年鑑別所での生活や体験の意味づけ、職員の接し方への評価が高く、かつ前向きだったことである。もちろん入所中(退所間際での記入)という立場も考慮しなければならないことは重々承知しているが、それでも具体性のある記述の中に少年鑑別所が少年達に行っている様々な配慮や接し方の工夫、心持ち、ひいては健全育成という法の理念が、職員を通じて少年達にきちんと伝わっていることを読み取ることができた。
もちろん、相対的には少ないとは言え、否定的な意見もあり、それはそれで改善に向けて考える材料を与えて貰ったと受け取れるものであった。

少年達は、もちろん違法な振る舞いによって、少年鑑別所に入所することになっているわけだが、私達関係する大人は、彼らの言うことに耳を傾ける姿勢を決して忘れてはならないと改めて感じさせられた経験であった。(伊藤直文)

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