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非行からの立ち直り

非行というと、原因に関心がもたれがちだったが、近年は立ち直りにも関心がもたれつつある。非行からの立ち直りに必要なことは何だろうか。

私は研究仲間とともに、非行から脱したひとに会って話を聞いてみた。そのひとの暮らしている場所に行き、そのひとの生の語りを聞き、こちらも質問して答えてもらえば、本当のことがわかるのではないかと考えたからである。非行を公表しているひとに、手当たり次第に手紙を書いて、会ってくれるようにお願いした。ほとんどのひとからは何の返事もなかったが、2人のひとから会ってもよいという嬉しい返事があった。

こうして、私たちは「出会いの構造」モデルという仮説を立てた。非行に至る経過はそのひとの境遇によって、さまざまであるが、非行からの立ち直りは、いつ、どんなひとと、どのような出会いをしたのかによって決まるという仮説である。出会いのかたちはひとそれぞれであるが、出会ったのは「自分をひととして認めてほしい」という願いに応えるひとであったことは共通する。

ただし、ひとりのひとから「私は立ち直らないといけないような悪いことは何もしていません」と言われた。本人にとっては「不良少女」という言葉が「大人の都合によってつけられた」ラベルだったのである。改めて考えるに、「立ち直り」という言葉は、あくまで他人目線であることを忘れてはいけないだろう。

それでも立ち直りという言葉を使って支援を考えるとすれば、何より重要なことは、少年に安心して住むところがあり、また働く場があるという、当たり前の暮らしが成り立つことであると考えている。(白井利明)

参考文献
堀尾良弘 (2020). 非行からの立ち直りと支援 本郷一夫(監修)白井利明(編)生涯発達の理論と支援 金子書房、pp.24-32.

 

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