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なぜ、わたしたちは罰を与えようとするのか

犯罪心理学と聞くと、どのような研究を思い浮かべるでしょうか。加害者の心理や被害者の心理、あるいは犯人像の推定などでしょうか。確かに、こうした研究は犯罪心理学の花形とも言えるかもしれません。ひょっとすると、この記事を見ている人たちの中にも、大学で犯罪心理学を学んで、非行に関与した少年や犯罪に関与した人たちを対象に研究をしたいと思っている人もいるかもしれません。ですが、現実的には大学の学部では、そうした研究は難しいことが多いです。

では、大学では犯罪心理学に関する研究ができないのかと言うとそういうことではありません。犯罪心理学では加害者や被害者に焦点が当たることが多いですが、その関係を取り巻く第三者も重要な存在です。犯罪に関与した人たちに対して周囲の人がどのように反応するかは、その人たちの後の生活に大きな影響を及ぼします。例えば、犯罪に関与した人たち(あるいは、何らかのルールを破った人たち)を見ると、私たちは罰を与えたいという気持ちに駆られます。その動機としては、加害者を懲らしめたいとか、また悪いことをするのを防ぎたいといったようなものがあります。

実際に、裁判員制度において裁判員に選出されると、被告人の有罪あるいは無罪を決定するだけでなく、有罪である場合、どれぐらいの刑を科すのかということを決めなければなりません。そして、その決定が被告人の人生を左右することになります。勿論、裁判員に選ばれる人たちは決して多いわけではないので、具体的な場面を想像することが難しいかもしれません。そういう人は、NHK for Schoolの昔話法廷(https://www.nhk.or.jp/school/sougou/houtei/)を観ると考えるきっかけになるかもしれません。有名な昔話に登場する人物が訴えられたらという架空のストーリーの中で、罰を与えるということについて考えることができます。

このように、第三者に焦点を当てて研究することも犯罪という現象を理解するうえで重要であり、興味深い視点であると思います。これから犯罪心理学を学びたいと思っている人たちには、様々な視点から犯罪という現象を考えてみてほしいと思っています。(中川 知宏)

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