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施設見学の魅力

少年鑑別所の職員から大学の実務家教員に転職して9年が過ぎました。現在、私が所属しているのは臨床心理分野の専門職大学院であり、毎年15名前後の学生が入学します。そのうち、家庭裁判所調査官や法務技官、警察心理職といった司法・犯罪分野の仕事に就きたいと考えている学生は例年2~3名ほどです。元法務技官の大学教員としては少し寂しい数字であり、より多くの学生にこの分野での仕事のやりがいや魅力を知ってもらいたいといつも思っています。しかしながら、非行・犯罪歴がないことはもとより、警察署や派出所にさえ行ったことがないという学生が当然ながらほとんどであり、それなりにわかりやすくかみ砕いて授業をしているつもりではありますが、私の力不足もあいまって、仕事のイメージが彼らには中々湧いて来にくいようです。学校や病院の話であれば、自身の経験をベースとしてぱっと頭の中に絵が浮かんでくると思われますが、「恐そう」、「危なそう」といった一方的な印象も重なるせいか、イメージしにくいものと思われます。こうした学生達に最も効果的で影響力があるのは、やはり施設見学だと改めて思います。コロナ禍の影響でお休みした時期を除いて、毎年度、家庭裁判所や少年鑑別所等の見学をさせていただいており、その効果を実感しています。それまでほとんど関心を持っていなかった学生が、見学終了後にがらっと進路を変え/見つけ、司法・犯罪分野を目指すようになったこともありました。生まれて初めて見る施設であることはもとより、第一線の現場で活躍する家庭裁判所調査官や法務技官からお話をうかがえること自体が極めて貴重な体験であり、何よりも現役選手のお話だからこそ彼らの心にも届きやすいのだと思います。

おかげさまで、この9年間で法務技官が6名、保護観察官が1名、都道府県警の心理職が2名誕生しました。医療観察法病棟の心理療法士や刑事施設の処遇カウンセラーとして働く修了生もそれぞれ1名ずついます。施設見学をさせていただく現場の先生方には大変なご面倒をおかけしておりますが、後進の育成のために、今後ともご高配を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。(宇都宮敦浩)

 

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