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警察心理職の経験から得たもの

大学院博士後期課程を満期退学して,警察心理職に就いたのは,今から20数年前のことでした。5年間という短い経験ですが,少年相談業務,犯罪被害者支援業務,採用業務などさまざまな業務を通して,多くの学びを得ました。

その中でも特に継続補導(家庭訪問)のことが印象的です。初めは明らかにこちらに不信感を抱き、何も話してくれなかった親御さん、お子さんがいました。話すことではなく、いっしょに家の掃除などをすることから始め、少しずつ雑談ができるようになり、時間を経てさらに深い話をしてもらえるような信頼関係を築くことができました。他にも司法面接や修復的司法,内田クレペリンやバウムテスト,MMPIなどの勉強を仲間と続けてきたことなど,今でもはっきりと当時のことを思い出すことができます。

5年間の警察勤務を経て,臨床心理学を専門とする大学教員になりました。現在,司法・犯罪心理学や臨床心理学,教育心理学や家族心理学を学生に教えています。また,いじめ問題の第三者委員やスクールカウンセラー、北海道臨床心理士会会長など,たくさんの仕事に恵まれています。

その中でも、警察心理職としての経験が私のベースをなっています。いじめの事例では、被害者だけでなく加害者とも関係を丁寧に作り、真摯に話を聴くことの重要性を感じていますし、また、不登校や子ども・若者の貧困問題を考える上では、家庭や学校の他に“サードプレイス”と呼ばれる地域社会における子どもたちの居場所づくりの重要性を感じています。

このような、被害者だけでなく加害者の更生も視野に入れた支援や子どもたちと社会とのかかわりの重要性については、警察心理職での経験を通して実感したものですし,今もなお警察心理職での経験が私の進むべき道を照らす羅針盤となっていますし、そのことを学生たちにも日々伝えているところです。

時代が大きく変わり、子どもを取り巻く環境も大きく変わりましたが、子どもたちは社会全体で育てる存在であること、どのような子どもたちにとっても社会とのかかわりが重要であることには変わりがありません。すべての子どもたちやその親御さんたちが支えられ、一人ひとりが安心して生活できる,そのような社会を目指すために,私は学生たちや多くの仲間たちとともにこれからも歩んでいければと思います。(飯田昭人)

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