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犯罪心理学を応用した「お化け屋敷」

皆さんは、夏の風物詩である「お化け屋敷」は好きでしょうか。私たちは,夏になると心理学式お化け屋敷を企画・運営しています。犯罪心理学とお化け屋敷,普通に考えるとどこに接点があるのか,不思議に感じる方も多いと思います。そこで,この両者の関係について解説してみます。

犯罪心理学の中に「犯罪不安」という研究テーマがあります。この「犯罪不安」は,①見通しが悪い,②誰かが隠れていそう,③自分が逃げることができない,④周囲に人通りがない,⑤犯罪発生のうわさがある,といった場合に高くなります。実は,この要素をお化け屋敷の中に取り入れているのです。

お化け屋敷に入ると,初めは暗闇に目が慣れていないため見通しがきかない状況です。人間は明るいところから急に暗いところに入ると,目が慣れるまでとても時間がかかります(暗順応)。私達は目で見た情報を最も頼りにして生活していますから,この暗さに不安を覚えます。そして,お化け屋敷の通路は,直線ではなく曲がっていて,曲がった先には誰かが隠れていそうな雰囲気を醸し出します。お化け屋敷の中は薄暗くて通路も狭いため,お化けが出たとしても簡単に逃げ出すことができません。大きな声で「助けて!」と言っても誰も助けに来てくれません。さらに,お化け屋敷ですから,どこかでお化けが出てくることは分かっています。先に入った人たちが,「怖かった」「もうお家へ帰りたい」と言いながら出てきたり,泣きながら出てきたりするので,お化けが出てくるという緊張はいやが上にも高まります。

このように,お化け屋敷という環境の中に,「犯罪不安」を高くする心理的要素を入れているのが,心理学式お化け屋敷です。目的は来場者の皆さまに楽しんでもらうことですが,子ども達には夜の一人歩きが危険であることを体験的に分かってもらい,夏の夜遊びを控えるように最後に指導もしています。

犯罪心理学とお化け屋敷の不思議な関係の謎が少しは解けたでしょうか。でも,学問的な理屈は抜きにして,童心に帰ってお化け屋敷を楽しんでください! (平 伸二)

参考文献
皿谷 陽子・石橋 健太郎・大杉 朱美・宮崎 由樹・平 伸二 (2022). ふくやま草戸千軒ミュージアムでの心理学式お化け屋敷の取り組み―広島県立歴史博物館と福山大学の博学連携の事例の紹介― 福山大学人間文化学部紀要, 22, 33-42.

(草戸千軒展示室画像(協力:広島県立歴史博物館)

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