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COVID-19の感染拡大と犯罪

COVID-19の感染拡大とそれを防止するための各種の施策は,人々の生活様式や行動を大きく変えさせました。犯罪行動も人々による行動の一つですので,やはりその影響は免れません。人々の行動が変化することによって,必然的に犯罪が発生する機会の構造も変わるのです。

ステイ・ホームやテレワークの推奨,学校の登校制限やオンライン授業により,複数の家族の成員が日中に家で過ごす時間は増えました。一緒に過ごす時間が長くなると,家族の成員間の交流は,ポジティブな面もネガティブな面も促進されます。そして,家族の成員のそれぞれには,コロナ禍における生活様式の急激な変化や何らかの形の行動制限,経済的な影響からの心的負荷がかかっています。

「一般緊張理論(General Strain Theory)」では,ポジティブな価値のある目標の達成を妨げられる,ポジティブな刺激を奪われる,ネガティブな刺激にさらされるといった場合には緊張が生じ,これらストレスによって生じたネガティブな感情に対する対処行動の一つとして犯罪行動が行われると説明します。もし,ネガティブな感情に対する対処行動のスキルや資源に乏しい場合,過ごす時間の長い家庭内でドメスティックバイオレンスや児童虐待などに至るのではないか,そうした件数が増えるのではないかということが懸念されています。

昨年一年間のドメスティックバイオレンスの相談件数や児童虐待の通報件数は確かに増えていますが,コロナ禍以前からほぼ一貫して増加しているため,コロナ禍のみの影響ではないかもしれません。そして,外出が制限されている場合や,家族間での監視が行き届く場合には,被害者が相談機関に支援を求める機会自体も制限されうるでしょう。発生している犯罪の実態を把握することは,なかなか難しいのです。

現在,世界各国でCOVID-19の感染拡大防止対策として行われたロックダウンが犯罪に与える影響について研究が行われています。どうやら,ロックダウンなどの施策が犯罪に及ぼす影響は犯罪のタイプによって異なっており,施策の内容,時期,場所によっても異なるようです。気になる人は,「COVID-19」「crime」で検索してみてください。  (渡邉和美)

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